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岐阜県高山市にて安心・安全な農業、そして漬物の生産を行う「よしま農園」さんに取材させていただきました。
代表の与嶋靖智(よしまやすのり)さんに取材を受けていただきました。
高山市では、古くから赤かぶ漬けなどの漬物が生産され、冬に雪に覆われる住民の食を支えてきた歴史があります。


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◆昔はどの家庭でも

昔は高山市のどの家庭に北東に光の差し込まない漬物部屋があり、3~4ほどの桶が並んでいたそうです。
そして、味噌、醤油、漬物を家庭で作ってきました。


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漬物がつけられる理由は、雪で覆われる畑で農作物の生産が行えないため、冬から春にかけての食を確保するためです。
それが、ここ20数年の間で、漬物作りの風習が廃れてしまい、多くの漬物桶は焚き木にされてしまったそうです。


◆飛騨高山の赤かぶ


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飛騨高山では、室町時代から赤かぶが生産されてきました。
この赤かぶの種を他の地域に持込、栽培しようと試みたことがあるようなのですが、栽培できないようです。
土壌や気候が赤かぶの命にとって必要なのでしょうね。
なお、赤かぶは、漬物以外には向かないそうです。


◆始めた頃は添加物を使用


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与嶋さんのお婆様、お母様が40数年前に宮川朝市(http://www.asaichi.net/)での漬物の出展。
観光の名所にもなっているこの市場には、全国から多くの観光客がこられることもあり、せっかく無農薬で生産した野菜でしたが、化学調味料を入れないと癖があり、物足りないと受け入れられず、仕方なく加えていたそうです。
ちなみに日本人は、現在年間約4kgの食品添加物を摂取しているそうです。


◆家族会議で無添加を決断

約15年ほど前、与嶋さんが、本格的に関わるようになってから添加物を加えることに疑問を感じ、家族会議を開きました。
『食は人が良くなる』と書く。
少なくとも人に悪く食品は作りたくない。売れなくても良いので、これからは自分たちの納得のいくものを作り、お客様に害のないものを作ろうと決心。
それからは、化学調味料を抜き、食塩も天日塩に替え、生産を開始されました。


◆木桶の魅力

当初、桶は軽くて手軽なプラスティック製のものを使用されていたそうですが、なぜが美味しくできない。
もちろん、市場でも売れない。
この理由は、プラスティック桶にあるのでばないか、昔から美味しい漬物は木桶で漬けられたのだからと考えるようになりました。
そこで地域の方々から家庭で使用しなくなった木桶を譲っていただくことに。
そして、約50個の木桶を集めることができたそうです。
古いものですと、天保時代のものも。
木桶は代々、嫁入り道具として受け継がれてきたようです。


◆乳酸菌による発酵

乳酸菌は、寒さに強く、他の雑菌の働きが鈍くなる時期に発酵できるという魅力があります。
プラスティック容器では、乳酸菌などの発酵を促す菌が住み着きづらいのだという。
大手の漬物では、培養した乳酸菌を加えて生産されているそうですが、「よしま農園」さんでは、もともと野菜に付着する乳酸菌、空気中の乳酸菌、そして天然の乳酸菌が豊富な糠をわずかに加えて作られています。


◆塩を加えて石を乗せ、ゆっくり発酵


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全体に塩をまぶし、石を乗せると浸透圧で野菜の水分があふれ出し、野菜の旨みが凝縮されていきます。


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そしてしばらくすると産膜酵母が表面を覆い、空気を遮断して、酸素を利用しない乳酸菌の発酵をサポートしていきます。
取材した際も、お酒などと同じように発酵過程で聞こえる「ポコッポコッ」という発酵音が聞こえました。


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そして、3ヶ月から1年、ゆっくりと発酵、熟成を行っていくと、発酵により栄養も増してくるのだとういう。


◆塩漬けは伝統ある飛騨高山特有


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赤かぶ漬けとえば、甘酢漬けが全国的にはポピュラーですが、甘酢漬けで使用される砂糖が普及してからまだ歴史は浅い。
伝統的に赤かぶ漬けが行われてきた飛騨高山では、もともと塩漬けにて行われ、現在でも塩漬けは飛騨高山特有なのだという。


◆子供がパクパク!

朝市で、赤かぶ漬けの試食を出すと、子供たちがパクパク食べるのだそうです。
与嶋さん曰く、
『最近、漬物離れが進んでいると言われていますが、それは添加物が原因なのではないでしょうか。本来、漬物とは食事を引き締めてくれるもの。しかし、現代の漬物が添加物が加えられた結果、変な味があり、引き締めてくれなくなってしまったのではないでしょうか。このことを子供たちから教わりました。』
なるほど!その通りですよね。


◆規模が大きくなることで失うことがある

与嶋さんは、生産量の拡大は行う予定はないそうです。
それは、この規模だからできることがあり、規模が大きくなることで失ってしまうものがあるからだそうです。
現在では、与嶋さんのように昔ながらの生産を行われているところはほどんどなくなってしまったようです。
この貴重な赤かぶ塩漬けを初めていただきましたが、独独の風味があり、漬物好きな私にはたまらない味でした。
この素晴らしい文化をぜひ、守っていただきたいですね。


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とても貴重なお話を伺うことができました。
取材にご協力をいただきました与嶋様どうもありがとうございました。


★飛騨高山 よしま農園
http://www.h5.dion.ne.jp/~yoshima/index.htm
〒506-0044 岐阜県高山市上切町378番地
TEL:0577-33-6216